6月27日 居場所というもの

早稲田大学の正門前の高田牧舎でサトコさんと待ち合わせ。サトコさんの友達、イケガミさんも加わって、3人で早稲田の是枝監督の講義に潜り込んだ。まずは、20分ほどの「海街diary」のメイキング映像を視聴。映画の冒頭、父の葬儀に出席するため訪れた山形の温泉旅館のロケ場所、なんと、わが故郷、花巻の藤三旅館だった。思わず、わーっと声をあげた。すずが連れて行った、すずが1番好きな場所、鎌倉と似ている眺めの高台も花巻だった。向立というはじめて聞く地名。どのへんか母に聞いてみないと。

映像の後、監督と、ゲストで、なんと、夏帆登場!生の夏帆ちゃんは、映画で見るよりずっと魅力的だった。自分の女性性を精一杯生きようとしていて、周囲もそれを大事にしている。そんな雰囲気が、キラキラした繊細なオーラから感じられた。女優という存在になんか刺激を受けた。

講義の合間、古くからサトコさんを知るイケガミさんと、サトコさんの昔の男はみんな出世しているという話になる。あげまん、というか、才能のある男と合う、ということだろうか。そういえば、サトコさんは元女優だ。

新宿へ出て、松本隆のトリビュートアルバムを買って、エスパへ。久しぶりに小野さんと会う。やっぱりこの人と話すと盛り上がる。谷根千の地元ネタなど。小野さんが早めに店を出たので、それにつづく。千駄木へ戻ったあと、飲み足りないので、小野さんとの話題にも出た、町人へ。先代のお別れ会以来、2度目だ。30代のマスターと話していると、新宿のロシア料理店で修行したことがあり、3丁目にかつてあった檸檬屋のスミエダさんを知っている、と。そうだ、その話を人づてに聞いて、スミエダさんの近況聞きに行かなくちゃ、と思っていたんだった。マスターはその場でスミエダさんに電話をかけてくれた。話すのは、5年ぶりぐらい?「変わりないか。まだ結婚してないのか」と心配してくれた。はい、はい。5年も経つのに、あいかわらず一人ですよ。今度町人で会う約束。

マスターはなかなかの文学好き。フラナリー・オコナー、フォークナーなんて単語久しぶりに聞いた。ああ、やっぱり私は文芸の話が好きだなあ。こんな話がふつうにできる場所、うれしいな。これから常連になりそう。

見失いかけてた本来の自分のいるべき場所を、映画や文学をとおして、思い出した、そんな1日だった。

いや、完璧な居場所なんてどこにもなくて、あったとしても、それはいつ失うか分からない儚いもので、だから、ここは自分の居場所じゃない、どこかに居場所があるはずだ、と探すよりも、今いる場所を、日々こつこつ自分に合ったものに変えていくことのほうが大切なのかもしれない。