5月7日 死者とのMake Love

タイトル、ちょっとカルトっぽいかしら?

原田知世が「恋愛小説」でカバーした、レナード・コーエンの「In My Secret Life」、英語の原文を自分なりに十分味わったので、どんなふうに解釈されているのか知りたくて、対訳を読んでみたら、奥田祐士さんの訳はちょっとピンとこなかった。

私が感じた詩の世界はこうだ。

死んだ恋人を思い、生と死の境界を彷徨いながら、心は乖離し、死のほうが正しいと知りながら、救済を求め、この唾棄すべき現実に怒りながら、冷笑的に踏みとどまっている。鬱的で、乖離的で、宗教的で、神話的ですらある世界だ。

奥田訳では、恋人が死んでいる解釈はされていないけど、私はどうしてもそこから離れられない。だって、死んでなかったら、4節の、人が死のうが生きようが、人は気にしない現実が、あなたを泣きたい気持ちにさせたりしないと思うんですよ。

レナード・コーエンのプロフィールを検索したら、詩人のほかに、禅僧とあったのも、私の解釈にちょっと勇気を与えてくれた。

文句言うなら、同じ土俵に立たなくちゃ、ということで、今日ははじめの1節だけ自分なりに訳してみたい。


I saw you this morning
You are moving so fast
Can't seem to loosen my grip
On the past
And I miss you so much
There's no one in sight
And we're still making love
In My Secret Life


今朝 あなたを見た
あなたはあっという間に過ぎ去っていく
どうしても手放すことができないみたい
過去のあなたを
あなたが恋しい
目の前には誰もいない
そして私たちは今もMake Loveしている
私の秘密の生活の中では (対訳:イクコ)


朝ベッドの中で、夢うつつで、死んだ恋人の幻を見た、そういうシーンがどうしても思い浮かんでしまう。目を覚ますと誰もいない。でも、彼を思い、Make Loveしてしまう。

「making love」は、奥田訳では「愛し合っている」となっているけど、それなら「love」でもいいはず。わざわざこの言葉を使ったのは、セックスしているってことじゃないかと思うのです。だから、秘密の生活なのです。死者とセックスしているのですから。死者と交わるって、神話にありそうなモチーフだけど、どうかな。

レナード・コーエンという人はどうも、世界中に熱狂的なファンがいるようだ。ちょっと読んでみようかな。 やめとこかな。大好きな世界ってわけじゃないから。

対訳はピンとこなくても、知世ちゃんの切なさがあふれるのに、透きとおった歌声には、もしかしたら検討違いかもしれない私の解釈も、重ねることはできるのです。 さすが、女優。