7月16日 台湾みたいに暑い一日

花蓮に行ってきた。台北に2泊したあと、鉄道で移動して、2泊する正味1日半の小さな旅だ。

台湾も4度目だし、今度は台鉄に乗って東のほうに、青木由香さん最近イチオシみたいだし、なんかほっこりするところらしい。という、ディープなような、ミーハーなのが、旅先に選んだ理由だ。

青木さんの『好好台湾』で、いくつか行きたいお店をチェックしていたけど、小さな街みたいだし、半日ですることなくなったら、2日目はホテルのタロコツアーに参加しようと、ゆるいスケジュールを立てていた。

7時10分台北発自強号にゆられて、9時55分降り立った花蓮駅の駅舎は、故郷の花巻の駅を思い出させた。ホテルへ向かうタクシーから見た街並みは、2年前に行った台南よりもっとのんびりした感じ。

ホテルに荷物をあずけてまず向かったのが、撲石珈琲。カフェの2階が地元発のミニコミ誌「o'rip」の編集室になっていて、バックナンバーが読めたり、地元のアーティストの作品が展示販売されていたりして、花蓮の情報発信スペースになっているのだ。青木さんが「花蓮はここから始めると、地元密着の温かい旅になりますよ」と書いているけど、本当にそのとおりだった。

北京語も分からないのに、目についた『花蓮好日子』という、花蓮のお店やスポットをイラストと文章で紹介した本を熱心にめくっていると、黒縁のめがねをかけた、たぶん「o'rip」の編集者の女性が、声をかけてくれた。はじめは北京語で、私がぽかんとしていると、すぐに達者な英語にきりかえて、「明日、その本を書いたIrisさんが来るイベントがあるのよ。ファーマーが来るマーケットもあるの」。私が好きな青空マーケット!行く行く!地図に会場の住所を書いて、印をつけてくれた。

ホテルでもらったツアーのチラシに、「兆豊農場之旅」というツアーがあって、農業体験ができるの?と、ちょっと気になっていたので、聞いてみると、「私たち地元の人は行かないわ。行くならやっぱりタロコツアーよ」と教えてくれた。地元の人の意見がいちばん参考になる。これで兆豊ツアーは消えた。

次に向かったのが二手書店・時光(北京語で古本屋を「二手書店」ということに今回初めて気がついた。Second Handということね。今までそういう名前の本屋があると思っていた)。これまた花巻市役所を思い出させる、花蓮市公所の近くで、このあたりかなと周囲を見わたして、趣のある家が目に入ったので、カメラを向けると、そこが時光だった。

ここも青木さんが紹介していた。日本にもよくある、ちょっとスノッブな古本屋を想像していたけど、店に入るなりイメージがくつがえされた。2匹の猫と子どもが遊んでいたのだ(次の日行ったら、ビーグル犬とゴールデンリトリバーがいた!)。

古い日本家屋を改装したであろう店内は、もともといくつかあった部屋をぶち抜いたらしく、ところどころ柱や壁が残されていて、奥行きがあって、隠れ家っぽい雰囲気。中央右手にカフェのカウンターがあって、低い天井には大きな扇風機がまわっている。日本でも谷中あたりによくある、古い建物を新しい感覚でリノベートした、でもけっしてワザとらしくなく、花蓮らしさがあって、とてもとても素敵な古本屋だった。

この街にも、新しい映画や音楽に興味があって、ちょっと知的なことや可愛い雑貨が大好きな人たちが住んでいる。

この瞬間、タロコツアーも消えた。明日は花蓮の街をゆっくり歩こう。そしてまたここへ来よう。こんな素敵な本屋がある街だから、私好みに違いない。

店のいちばん奥のカフェスペースで林檎のお茶を飲みながら、置いてあった『花蓮好日子』の行きたいお店の場所を地図に書き込みながら、翌日のスケジュールを練った。壁には一青窃がのった大きな「珈琲時光」のポスター。日本から遠く離れたところにいることも忘れて、ゆったりと時間を過ごした。(つづく)