3月17日 冷たい雨の一日
はじめて海を見たのは いつのことだったろうか
古い写真の中の私は 姉と色違いのレインコートを着て
赤いおもちゃのバケツをもってはしゃいでいる
あれは3才の頃 家族で行った潮干狩り 高田松原の海
陸前高田の海には 思い出がたくさんある
高校1年の頃 その年の卓球部の県大会が
陸前高田であって 海のすぐそばの民宿に泊った
夕食前同級生3人で民宿を抜け出して
小さな漁村の海辺を歩いた
夕焼けにそまった海がきれいだった
小さな漁船に乗った漁師さんが声をかけてくれて
私たちをその船に乗せ 湾をクルーズしてくれた
遠くに高田松原が見えた
かわした会話はもう思い出せないけど
あの漁師さんは あったかい人だったんだな
一日の仕事を終えて ホッとしているとき
内陸からきた高校生に 自慢の海を見せてくれる
そんな心の豊かさがあったんだな
でもホント言うと 高田松原の海は波が高くて怖かった
足が届かないところまで ぜったい行かなかった
波うちぎわで 波がくるだび スリルをあじわっただけ 波が引いていたあとは 水着の中まで砂がいっぱい残ったっけ
大きな岩で囲まれて 白い石が敷きつめられた浜は
歩くとちょっと足の裏が痛かったけど
波もなくて 水はびっくりするほど透き通っていた
道楽者の叔父さんの船で
浄土ヶ浜のすぐそばの小さな桟橋に
乗りつけたことがあったっけ
下り立ったあの桟橋からの風景を 今も覚えている
内陸育ちの私は 現実知らないから
ついついセンチメンタルになってしまう
変わらない日常があるから 忘れそうになってしまう
それでもなお ときおり胸をふさぐ
喪失感や痛みを ちゃんと心に刻まなくてはいけない
キラキラした夏の思い出や 三陸の人たちを誇る気持ちは
私の中にたしかに深く刻まれたものだから