9月12日 晴れ、残暑、満月

盛岡を「旅」してきた。

花巻で生まれ育った私にとって、盛岡は子供の頃から何度となく行った身近な町。

木下大サーカスを観に連れて行ってもらったり、川徳デパートでおもちゃを買ってもらったり、高校生になって、おしゃれや映画、音楽に興味をもつようになると、友達と約束して出かけるのが一大イベントになった。

盛岡は花巻にはないものがある都会、最近までそんなイメージだった。ずっと都会の東京に出てきてからも!でも、それは、ほんの一面にすぎなかった。

「旅」してみようと思ったきっかけは、「てくり」。

存在は前から知っていて、手にとったこともあったけど、染色や豆腐作りをしている盛岡の町の人をじっくりと追った記事は、もの作りをとくにしてない私には、買って読むほどのものではなかった。

やはり震災後だ。

岩手の暮らしや文化が日本中に誇れる素晴らしいものだと思うようになって、その魅力にようやく気づき、バックナンバーを少しずつそろえるようになった。

「てくり」に載っていた熊ヶ井旅館を宿にとって、「やまびこ」で新花巻駅を通過して、初めて新幹線盛岡駅に降り立った。東京から仙台と盛岡にしか止まらない「はやて」にするべきだった、と気づいたのは少しあとのこと。

旅人の目で見た盛岡は、新しいものをとりいれつつも、土地とどっしりとつながっている、文化の香り高い城下町だった。人の移動があるからだろう、盛岡人のコミュニケーションも花巻よりずっと洗練されているけど、時間がゆったりしているから、親切。でも、けっして押しつけがましくない。

東家、光源社、藤原養蜂所、森九さんに、釜定さん。いつも行く好きな場所にくわえて、今回のいちばんの発見は、神子田の朝市。

ヘルシンキプラハ、ブタペスト、香港、台北、京都。旅先ではかならず市場に足を運んでいるけど、盛岡神子田もなかなかどうして。こじんまりしていて、のんびりしてるけど、みんなが笑顔で活気があった。休日には身動きできないほど、混み合うんだそうだ。

「安いよ、安いよー」。岩手のおばあちゃんも客引きするんだー。私目あての客引きもなんだか微笑ましかった。

姫竹とラッキョウ漬け、梅干に山椒の塩漬け。地のものでていねいに作られた保存食を、生産者の方に作り方や美味しい食べ方を聞きながら買った。姫竹はちょっと高めだったけど、山に取りに行ったとき、熊に会った話を聞いたので、値切らずに買った。

朝ごはんに食べたひっつみが美味だった。

こういうところが近くにあったらよかったなー。

違う季節にまたぜったい行ってみたい。