8月2日 秋のような涼しさ

もう語られることもなくなった話題だと思うけど、今夜は落ち着いた気分なので書いてみようと思う。

少し前に自殺した花巻東出身の大学野球選手、佐藤涼平君のことだ。

手元に岩手日報社が出した『激闘2009 花巻東』という本がある。「みんながヒーロー」というページに、満面の笑みでマウンドに向かう、佐藤君の写真が載っている。

2009年夏の甲子園準々決勝、明豊戦延長10回。送りバントで出塁したものの1塁手と激突、救護室に運ばれた、この夏最小兵155センチの佐藤君が、「1点取ったぞ」と治療中に聞かされ、みんなが待っているマウンドに戻ろうと、飛び出した瞬間の写真だ。

2万7千人の観衆が、「おおー」と雨のような拍手で迎えてくれた。「ここで野球をできる幸せを感じた」と佐藤君。佐々木監督はこの瞬間「この試合は勝った」と思ったそうだ。

2万7千人に温かく迎えられる。こんな瞬間誰でも経験できるものではない。

でも、こんな輝かしい青春の一瞬も、素晴らしい仲間も、先生になりたいという夢も、厳しい時を乗り切る支えにならないほど、彼にとって現実は過酷なものだったのだろうか。まだまだこれからだったていうのに。

少年野球マンガみたいだったチームの、悲しすぎる結末だ。