3月12日 晴れ

すっかり日常をとり戻しているけど、寝不足のせいだろうか、ちょっとボーっとした感じが抜けない。

その瞬間、私は会社がある21階にいた。揺れはハンパなかった。いつもなら揺れは最初の1回だけなのに、これでもかこれでもかと余震がつづくなんて初めての体験だった。オフィスは騒然となって、みんな机の下にもぐり込み、泣き出す女の子もいた。ヘルメットをかぶって、机の下にうずくまりながら、会社用のサンダルから金曜なのでたまたま履いてきたスニーカーにはき替えて、ビルが倒壊する危険にそなえた。

帰りは千代田線を利用している同僚2人と歩いて家の方角をめざした。「大晦日みたいだなね」なんて言いながら。あんなにぞろぞろ大勢の人が歩いている光景を初めて見た。

ビルの倒壊もないし、地下鉄の職員は職務を全うし、人々も整然と列をなして歩いていた。徒歩帰宅者のために「トレイを貸します」という貼紙を出す商店もあった。日本なかなかやるじゃないかと思った。

大江戸線が開通した春日駅で同僚たちと別れ、根津まで来るともう地元。あるいたいの灯りがついていたので思わず寄った。常連さんたちとちょっと興奮した感じでお互いの状況を語りあった。本棚が倒れてたいへんという人がいて、ちょっと不安になったけど、12時を回った頃家に着くと、揺れの方向のせいか上の棚から軽い本が数冊落ちていた程度で拍子抜けするほど被害はなかった。

安全装置が作動してガスが止まっていたし、ちょっと怖いので、お風呂に入らず、上は服を着たまま布団に入った。長い一日は終わった。金曜日でよかった。

でも、すごくいい経験になった気がする。