12月23日 晴れ

昨日会社で背筋が凍るような怖いことがあった。その怖さは1日経った今も胸の真ん中に居座りつづけている。映画を観ても、ごはんを食べても、街を散歩しても、思考はいつもどうしようもなくそこに戻ってしまう。

人というのは私が想像する以上に、計算高くて、スキがあるとそこを利用して、陥れようとしてくる。私に実質的な損害があったわけではないから、勉強になったと思えばすむことであるし、少し時間がたてばそう思えるはずなんだけど、もともと田舎者で女1人で生きている私にはちょっとツラすぎる、むき出しの世間を見てしまった感じだ。

昨夜はそんな気分のままだったけど、前から決めていたので、会社帰り「モンガに散る」を観に新宿に行った。いい映画だったけど、胸の中は世間の怖さが占めているから、台湾の極道の世界の悲しくも切ない友情の物語は、裏切りの部分だけがフューチャーしてしまい、映画のもつ多様なメッセージは読みきれなかった。

今日はいい陽気で大掃除にはもってこいの日だったけど、お昼ぐらいまでベッドでグズグズしている自分を許した。遅い朝食を食べて、ベッドカバーを洗濯して、木曜日は割引の日なのでセーターを2枚クリーニングに出してから、往来堂に出かけた。こういうとき私は文学が必要になる。今回はちょっとばかり深めの傷を、それよりももっと深いレベルから癒してくれるのは、今の私にとっては、そう、よしもとばななしかない。気になっていた新刊『どんぐり姉妹』を買う。

部屋に戻る気になれず、街をぶらぶら歩いて、ノマドに入った。クリスマスの飾りつけもさすがさり気なくてセンスがいい。今日まだ飲んでいなかったコーヒーを注文して、『どんぐり姉妹』を読んだ。前半の主人公の姉妹の事故で亡くなった両親に姉妹が生まれたときの話の箇所を読んでいたら、私の両親はお見合い結婚だし、今までそんな風に思ったことはなかったけど、私もどんなかたちであれ両親の愛の結晶として生まれてきた存在なんだと感じて、涙が止まらなくてなった。もうやめてよ、私の涙腺。ここのとこゆるみすぎ。

店を出たあとは、明日のパーティの買出しに谷中銀座のスーパーや酒屋さんをめぐった。明日一日頑張ったら、夜は友達とバカ話ができる。今夜は『どんぐり姉妹』の続きをゆっくり読んで、思いっきり泣いて、涙と一緒に石みたいに重い気分も流してしまおう。